2004年08月26日

Review:『華氏911』

Fahrenheit 9/11
http://www.kashi911.com/
2004年アメリカ作品
Director: Michael Moore

マイケル・ムーアが、『ボーリング・フォー・コロンバイン』でアカデミー賞を受賞した席上、ブッシュに対して「恥を知れ」と発言をして会場からブーイングを食らったのは、2003年3月のことだった。ほぼ時を同じくして、世界はイラク戦争に突入した。
あれから1年と数ヶ月しかたっていないのに、イラク戦争が随分前のことに感じられるのは気のせいだろうか。
まして、あれだけ世界が騒いだ4年前の大統領選挙など、途方もなく昔のことのようにも感じられる。それだけ、世界はこの4年間の間に動いた。

そんな、めまぐるしく動きすぎて私たちがつい忘れてしまっていた出来事を、わずか2時間のフイルムに凝縮した、マイケル・ムーアの快作だと思う。

この映画は、間違えなくマイケル・ムーアの映画だ。
マイケル・ムーアが監督・制作した映画だし、マイケル・ムーアの世界を描いた映画である。
全ての映像・音はムーアの世界を表現するために用意されているし、時折画面に登場する彼自身も大きなインパクトとして見るものの記憶に残る。
日本で発売されているこの映画のパンフレットには、冗談めいて「主演:ジョージ・ブッシュ」と書かれているが、間違えなくこの映画で一番輝いているのはムーア自身である。この映画は、そのような意味では途方もなく危険だ。
ムーアという、このフイルムのストリームを支配する「スター」の存在は、ブッシュは痛快にも「スターに対峙する悪役」に仕立て上げてしまう。気がつけば、ブッシュは映画の中で、「ヒーローに立ち向かう悪役」になってしまうのだ。

だが、そんなマイケル・ムーアの心憎い演出によってこそ、私たちはこの4年間の時の流れが凝縮された姿を垣間見ることになる。「ブッシュの時代」は、短い目で見ても長い目で見ても、間違えなく血まみれだった。それだけは間違えない。

「テロリズム」も「戦争」も僕は個人的には好まないし、それに見合うだけの「大義名分」だなんて、簡単に見つかるものでもないと思う。だが、それにしても、ブッシュ政権が引き起こした一連の戦争に、その犠牲に見合うだけの「大義」があったとはとても思えない。「大義」があるから戦争をしてもよいというわけではないが、ブッシュ政権がこの3年間述べてきた戦争の大義名分はあまりにも気まぐれで恣意的である。イラク戦争を開始した際、ブッシュは「大量破壊兵器」の存在をその理由に挙げた。だが、現在イラク戦争の成果は、「イラクの民主化」として語られている。「大量破壊兵器」と「民主化」は、少なくとも全く別の問題であり、容易にすりかえられ得る問題ではない。
ブッシュも、それを支持した人々も、それをだまって看過した人々も、甚大なる犠牲を引き起こしてしまった以上、結果に対してのそしりを免れないのは当然だし、その責任は負えるような軽いものではないだろう。

本来ならば歴史が評価すべきことだ。だが、アメリカ国民は今年の末にはブッシュに対して一定の評価を下さなくてはならないし、その評価は次の4年間のあり方でもある。現時点では分からない点が多いが、それでも「沈黙」は許されないのだ。
「沈黙」を破ったという点において、監督ムーアは少なくとも評価されるべきだ。
そこで声高らかに語るムーアへの評価は、また後から下されていくべきなのだが。

最後に、素直な感想を。
面白かったです。
扱う内容が内容なだけに、賛否両論はあるかと思いますが、シリアスなテーマを扱いながらも、観客を楽しませることを忘れない、上手い映画だと思います。
オススメといえばオススメ…でも、デートで見に行くのはちょっと微妙かも…。

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